僕は【戯れ記事《ゴト》遣い】

「戯れ言遣い」ならぬ「戯れ記事遣い」を名乗るブロガーです。 雑記系ですが、読んで損したと憤慨されても困ります。 だってコレは「戯れ言」だから――

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 — 最 新 記 事 —

【ガルクラ】ガールズバンドクライ 二次創作ノベル短編集【同人版・非公式小説】

【ガルクラ】ガールズバンドクライ 二次創作ノベル短編集【同人版・非公式小説】

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 注)当小説は「こんなガルクラもあるかもしれない」というIFを描いた同人作品です。本編とは作中団体名などが異なる場合があるパラレルワールドと理解して下さい

バーンブレイバーンの二次創作verアフターストーリー


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アルバイト

ガールズバンド〈トゲナシトゲアリ〉のプロ活動がスタートして数日。

メジャーレーベルによるデビューシングル発売に備えて曲作りの日々を送っている。

彼女たちは才能と可能性を認められ、有名芸能事務所 株式会社ゴールデンアーチャーと専属契約を果たした。音楽専門ではなく芸能分野全般を手掛けている大手事務所だけあり、完全歩合制ではなく月給20万(25日振込)も支給して貰える。なお、5人のメンバーとバンド構成は以下の通り。

 

●ヴォーカル:井芹 仁菜(17)

●ギター:河原木 桃香(20)

●ベース:ルパ(22)

●ドラム:安和すばる(17)

●キーボード:海老塚 智(16)

 

時刻は夜。

スタジオでの練習を終えて、仁菜は桃香の家であるシェアハウスに寄っている。

夕食はメンバー全員で、外食(ファミレス)にて済ませていた。

真っ直ぐに自宅アパートに帰らずに桃香の家に来た目的は、ギターの自首練習を見て貰う事である。ギター初心者である仁菜は、いつの日かライヴでギターを演奏する事を目指していた。智に「下手くそ」と叫ばれたあの日からは、各段に進歩している自信がある。

ひと通り演奏し終えて、仁菜は桃香に意見を求めた。

 

「――どうでしたか?」

 

「そこそこ上手くなっていて驚いた。以前に聴いた時とは別人だ」

 

桃香は驚きと共に褒めてくれ、彼女が気になった点を的確に指摘してくれた。

うんうん、と頷きながら仁菜は修正点を丁寧に確認する。それで練習は終わりだ。次に聴かせる時はもっと驚かせたいと思う。ライバル視しているバンド〈ダイヤモンドダスト〉のヴォーカル、ヒナのギターテクに早く追い付きたい。

このまま泊まるつもりはないので、あと1時間ほどで自宅アパートに帰る。それまではまったりリラックスタイムだ。

 

ビールを飲みながら桃香が仁菜に注意した。

「おい。だからエゴサは控えろって言っているだろ」

 

スマホ画面を睨みながら、仁菜は反論する。

「だって気になるじゃないですか」

 

「いや、気にするなって言っているんだ」

 

「うぅ~~。ダイダスダイダスダイダス、私たちトゲトゲよりダイダスばっか!」

 

桃香が肩を竦める。

「そんなの当たり前だろ。むしろメジャーでのデビューシングルを配信前のトゲトゲが、メジャーデビュー済みで活動も軌道に乗っているダイダスより評判上だったら、おかしい」

 

「納得いきません! そして悔しいです!」

 

桃香はため息をついた。

「あんまりギャーギャー騒ぐなら、もう帰れ、鬱陶しい。せっかく夜勤から解放されて夜はゆっくりできる生活になったのに」

 

月給が入る様になり〈トゲナシトゲアリ〉のメンバーはアルバイトから解放されている。とはいっても国民健康保険、国民年金、各種社会保険および税金を考えれば、月に20万円だけでは楽とは言えない。音楽収益・グッズ収入(事務所との折半)を稼ぐ必要がある。

 

夜勤という単語に、仁菜の興味は他に移った。

 

「そういえば、桃香さんってなんのバイト、いえ夜勤していたんですか?」

 

「あれ? 知らなかったっけ?」

 

「はい。あ、いかがわしいバイトだったら言わなくてもいいですよ?」

 

ニヤニヤした仁菜を、桃香は眉根に皺を寄せて睨む。

「そこまで落ちぶれていない。単発以外はコンビニと清掃の掛け持ちだよ」

 

仁菜は拍子抜けした。

「なんか普通で、ちょっとガッカリしました」

 

桃香が顔をしかめる。

「お前はどんな回答を期待していた。人手不足で、コンビニ夜勤はシフトの融通を利かせて貰えて、なおかつ時給がいい。特殊清掃ではない清掃の夜勤シフトは限られているが、時給が凄くいいからな」

 

未成年の仁菜は夜勤ができない。

そういった経験に対し、少しだけ羨ましくもあった。

 

「夜勤の清掃ですか」

 

「オフィスとか商業施設の、ワックスがけ付きの大規模な床清掃とかだな。昼間にやる様なパートの人達がやっているのとは少し違うんだ。そこそこキツイけどな」

 

「キツイのでしたら、私には無理かも」

 

今度は桃香から質問してくる。

「仁菜は、吉野家のバイトを辞めてから、なんのバイトをしたんだ?」

 

 

「え?」と、仁菜は動揺した。

 

桃香がニヤリと笑む。

「ルパと智から聞いているぞ。バイトを変える時、1人でやっていくだけではなく、吉野家以外にもバイト経験を積んで大人になってみせる、と啖呵を切っていたと。そこまでの大口叩いたからには、さぞかし経験を積めたんだろう? 聞いてやるから言ってみろ」

 

仁菜は頬を膨らませて半白眼になるしかない。

 

「なんだ言えないのか? 私にはなんのバイトをしていたのか教えろと言ったのに」

 

観念して、仁菜は話し始めた。

おそらく嘘を言っても、すぐにボロが出ると覚悟を決める。

 

「熟考した結果、やっぱり経験がある飲食店でバイトしていました。他業種ではなく同業で手堅くキャリアアップを図ろうと」

 

「飲食? 無難すぎてツマラナイな。コンビニとかドラッグストアとかの店員に挑戦してみても良かったんじゃないか? 品出しやレジ操作とか共通点もあるし」

 

おちた、ん、です

震えた小声。

 

「ん?  なんて言った今」

 

ヤケクソ気味に仁菜が声を張り上げる。

「落ちたって言いました! 採用面接で落ちまくったんですよ! コンビニも! ドラッグストアも! スーパーマーケットも! お弁当屋さんも! ファミレスだって! どこもどこも不採用ばかりで!」

 

「マジか」と、桃香は驚く。

そして呆れた。

 

「この人手不足バイト不足のご時世で不採用ばかりって、どれだけダメな面接しているんだ、お前。よっぽど酷い受け答えしないと、普通は試しにとりあえず採用だぞ」

 

「だって現実に不採用ばかりだったから! 全部!」

 

「で、飲食でバイトって言ったが、それって結局は牛丼チェーンなのか?」

 

「うぅ、そ、それは」

 

「松屋か? すき家か? 変化球で松乃屋だったりして。ん、違うのか」 

 

項垂れながら、仁菜は桃香に頼み込む。

「この事、他の3人には絶対に黙っていて下さい。結局、業務経験ありという事で、そこしか採用されなかったんです」

 

「お、お前、まさか」

桃香の顔面が引き攣った。

恥ずかしさを堪えて、仁菜は白状する。

 

「はい。吉野家を辞めて始めた新しいバイト先は――」

 

――吉野家 京急川崎店、です――

 

オチを聞いて、桃香が腹を抱えて笑い出す。

大声で笑い転げる。

顔を真っ赤にして仁菜は主張した。

 

「川崎西口店よりも定食系のメニューが多くて、キャリアアップはできました!」

 

智からのミッション

すばるは、珍しく智からの呼び出しで喫茶店にいた。

2人は対面でパフェを突いている。ここまでこれといった会話は皆無だ。

 

基本的に智はルパと一緒にいる。

そんな智が1人だけで自分にコンタクトを求めてきた。理由を推察して、すばるは少しだけ気が重かった。その反面、頼られて嬉しい気持ちもある。

 

思い切って、すばるから切り出す。

「ねえ智、ルパさんと何かあった?」

 

おおかた喧嘩でもしたのだろう。

あくまで予想であるが他に思い付かない。

だが智は不機嫌そうに首を傾げる。

 

「どうしていきなりルパの名前が出るのよ」

 

外れたみたいだ。

 

「じゃあ、ニーナがまたくだらない問題を起こした?」

 

「仁菜は関係ないわ」

 

いよいよもって呼び出しの理由が分からなくなった。

(まさか)と、すばるは確認する。

 

「智って、私との親睦を個人的に深めたいとか?」

 

「アンタの私に対する認識って、どうなっているわけ?」

 

ジロりと睨まれ、すばるは「にひひ」と皮肉な顔に。

「まだまだ私に心を開いてくれていない捨て猫系のハリネズミ、かな」

 

「その認識は間違いよ。心を開いているからこそ、すばるに頼みがあって呼び出したの。これは私とすばるの2人だけの約束。いわば信頼の証ね」

 

思いがけず真剣な眼差しを向けられて、すばるは少し戸惑った。

面倒な頼み事でなければ良いのだが。

ちなみにパフェ代は智の奢りではなかった。

 

        ◆

 

「あぁ~~、温かくて、床暖房さいこー」

 

すばるの自宅――タワーマンションに遊びに来ている仁菜が、フローリングの床に寝転がって愉悦の表情で和んでいた。

そんな仁菜を、すばるはジト目で睨み付ける。

 

「ちょっと、ちゃんと聞いてた? ニーナ」

 

「聞いてた聞いてた、床暖房さいこ~~」

 

すばるは頬をヒクつかせ、額には青筋が浮かぶ。

「おい。真面目に聞かないと叩き出す」

 

面倒くさそうに身体を起こした仁菜が、すばるに条件を提示する。

「だったら、私がすばるちゃんと智ちゃんの約束を叶えたら、ルパさんが壊したドアの弁償を勘弁してくれる? チャラって事で」

 

「ニーナの「ルパさんが壊した」って認識が怖いわ」

 

「実際に蹴ったのはルパさんだよ! 私は悪くない! ドアに関しては抵抗した桃香さんだって問題があったし! 蛇が怖いってヘタレな桃香さんも悪いよ!」

 

「ニーナが桃香さんをしつこくからかうからでしょ。それ以前に、あの夜の全ての元凶はニーナ。だから私はニーナに弁償を請求したの」

 

「違うよ!? あの日も言ったけれど悪いのは私じゃなくて、勝手に壊れた私のアパートのクーラーだから。次に悪いのが智ちゃんの家のオンボロクーラー! あのオンボロクーラーが壊れなければ、あのまま一晩、智ちゃんとルパさんの家に居座ったのに」

 

すばるは半白眼になる。

「さらっと本音を暴露するな、さらっと。しかも未だに反省ゼロだし、修理もまだだし。智の団地のクーラーは壊れたんじゃなくニーナが壊した、だから。なにシレっと他人事みたいに認知を改竄している」

 

「だって私は間違ってない! それになんだかんだで、あの晩はみんなで楽しかったよね? すばるちゃんだって楽しんだよね!?」

 

怒りを思い出しながら、すばるは断じた。

「あの時は本気で「2度と来るな」って思ったわ。マジで殺意すら湧いたから」

 

ニコニコしながら、仁菜がすり寄ってくる。

「またまたぁ~~。素直じゃないな、すばるちゃんは。楽しかったって認めなよ。それにすばるちゃんを怒らせて悪かったのは、私じゃなく桃香さんと智ちゃんだとも」

 

「堂々巡りになるから、それは置いておくとして、本当にニーナに任せて大丈夫?」

 

「大丈夫だよ、私を信じてすばるちゃん。すごく良いアイデアがあるんだから!」

 

自信満々な仁菜に、すばるは一抹の不安を覚えた。

果たしてどんなアイデアなのか。

心配ではあるが、今は仁菜に頼るしかないのも不本意な事実だが。

 

        ◆

 

――後日。

共用のメインエントランスホールからのチャイム連打が鳴り止まない。

すばるは何事かと、インターフォンのモニタを確認する。

画面には、怒り心頭の智。

 

(嫌な予感がする)

 

絶対に仁菜が原因だろう――と、すばるは音声をオンにした。

 

「どうしたの? 智」

 

『ちょっとすばる! アンタ、私との約束を破ったでしょ!』

 

「なんの事かな?」

悪足掻きだが、すっとぼけてみる。

 

『とぼけないで! これ見なさいよ!』

 

智の怒り顔と入れ替わりでモニタにアップになったのは、すばるの祖母・ベテラン大女優「安和 天童」のサイン入り色紙。それも「智ちゃんへ」と贈り先の名前付きだ。

すばるはガックリきた。

 

『明らかに偽造品じゃないのコレ! 本体のサインは頑張って似せているけど、智ちゃんへの字が明らかに仁菜の字でしょ。それに普通は「海老塚 智さんへ」って書くでしょ、年齢を考えたら。ってか、なんで仁菜に話すのよ!』

 

        ◆

 

呼び出された仁菜は全く悪びれていなかった。

罪悪感ゼロの照れ笑いを受けべ、こう戯れ言をのたまう。

 

「失敗だったかぁ~~。いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」

 

智が仁菜に詰め寄る。

「アンタ、自分がやった事を分かっているの? サイン偽造して詐欺よ詐欺!」

 

「違うよ? ネットで本物だって騙って販売したりしない限り大丈夫。智ちゃんを騙しただけだから。ちょっとした悪戯だよ」

 

智が半白眼になった。

「騙している自覚はあるんじゃない」

 

すばるは仁菜を睨む。

「こんなバカな小細工をかますとは。やっぱりニーナに任せたのは失敗だった」

 

「だいたい、どうして仁菜に話したのよ?」

 

「正直いうとさ。おばあ様は昔から公私をしっかり別ける人で。私が小さかった頃、こういった頼み事は基本的にNGなのよ。だから今でも、さ」

 

「それならそうと正直に言ってくれれば、私だって無茶は言わなかったのに」

 

「せっかく智が頼ってくれたから断るのもって。結局、小さい事に叱られた記憶が蘇って、おばあ様に連絡できなかったけど」

 

仁菜が提案した。

「じゃあ、すばるちゃんのスマホから智ちゃんが天童さんに直に頼んだら?」

 

智が驚く。

「そんな! 畏れ多い!」

 

「あらあら~~、智ちゃんビビりかな? 桃香さんと同じビビりのヘタレかなぁ?」

 

「うるさい。アンタに煽られると誰よりも腹立つわね。やってやるわよ。すばる、悪いけれどスマホを貸して。すばるに迷惑はかけないから」

 

それから、すばるのスマホで天童と通話した智は、すぐに天童と打ち解ける。

可愛い孫のバンド仲間にして友人という事もあって、サイン入りグッズのプレゼントも快く了解してもらえた。流石に直に連絡を取り合うのは非常識であると互いに遠慮したが、今後はすばるを通してファンレター等を送れる様になる。

 

その様子に、仁菜が自慢げに胸を張った。

「これで智ちゃんのミッションは果たしたよ。約束通りドアの弁償の件は――」

 

そんなわけあるか。

べし!

すばるは無言で仁菜の頭部にチョップをかました。

 

ありがと

 

注)2期があると信じて、チンタラ書き足していきます。