【快作ではなく魔作】『BanG Dream! It’s MyGO!!!!! / Ave Mujica』について語ってみる【異形の前後編構成】
さあ、今日も戯れ言《
この記事は2025年3月11日が初アップだ
【引用元――BanG Dream! Ave Mujica(原作:ブシロード、BanG Dream! Project)より抜粋】
前編は後編への序章(伏線)だった
EDクレジットについて
これは同クール放映の『もめんたりー・リリィ』と同じ意味だと思う。
通称『もめリリ』――まあ実際は『どんどん』『かっぽー』呼称の方が浸透しているが――も、主人公である「霞 れんげ」がトップではなく4番目だった。クレジットトップはミスリード的なニセ主人公であった「河津 ゆり」である。
つまりニセ主人公を排して「縦書きでクレジットを並べる」と。
主人公であるれんげが、5人チームのセンターにくる。
『It’s MyGO!!!!! / Ave Mujica』も同様だ。
【引用元――BanG Dream! Ave Mujica(原作:ブシロード、BanG Dream! Project)より抜粋】
2バンドで10名を「縦書きクレジット」にすると、祥子と燈が中央に。
これは燈に付いて行く4人(前編)と、燈と別離した祥子に付いて行く4名という対比構造にもなっている。
以降の記述にはネタバレを含むので注意
これは史上「最凶の」バンドアニメ――
登場人物を整理してみる
中学時代:祥子・睦・そよが同じ学校、立希、燈は別々の学校
高校時代:祥子・燈・愛音(転校生)が同じ学校(羽丘女子学園)
※祥子はCRYCHIC解散後に羽丘女子学園に転校
そよ・睦が同じ学校(月ノ森女子学園)
立希・初華(初音)・海鈴が同じ学校(花咲川女子学園)
楽奈は中学三年(花咲川女子学園)
にゃむ(若麦)は別の学校(都立芸術学院高校)
①豊川 祥子
後編主人公にして、おそらく全体(26話)を通しての真主人公。
群像劇ではあるが大局を俯瞰すると、これは彼女の物語。
豊川グループ経営者一族の令嬢。実母は早くに病没。婿養子であった実父は不祥事(詐欺に遭ったという体裁で豊川家に嵌められた)の責任で一族を放逐。グループ総裁である祖父(彼も婿養子で豊川の直系ではない)の庇護下にある。
中学時代、バンド『CRYCHIC』を立ち上げた(きっかけは中学体育館で観たMorfonicaのライヴ)。燈の歌詞と歌に惚れ込む。
その『CRYCHIC』は、一族を放逐されてしまった実父を支える為(実家を飛び出して安アパートで、主な収入はテレアポと新聞配達のバイト暮らし)に、活動が困難になる。断腸の思いで『CRYCHIC』解散の決断を下す。当時、事情を察していたのは幼馴染の睦のみ。他のメンバーが実相を知るのは後半の終盤である。
自身の実力で成り上がる為に、新たなるバンド『Ave Mujica』をプロデュースして立ち上げた。順調にメジャーデビューして絶大な知名度と人気を獲得するも、メンバー内の不和により解散(史上最速の武道館から全国ツアー中での出来事)。その後、祥子は実父を支えるのを断念し、祖父の元へ戻る。
バンド活動する意義と目的を失った祥子であったが、メンバーの希望により「人生を預かった責任」を果たす為、己の情熱とは別に『Ave Mujica』を復活させた。
だが、復活ステージ後、祥子は祖父にスイス留学を命じられ、家に幽閉される。
しかし祖父の意向に反旗を翻し、初華(初音)を迎えに「別荘のある離島」へ行く。別荘で「島への帰還を命じられた初華(初音)」と再会し、初華(初音)の秘密を知る。その上で、2人で東京に戻る。初華(初音)と共に「祖父の言いなりにはならない」と最後の意思表示し、再び初華(初音)のマンションで2人暮らしに。
なお、祥子は2人だけの時は初華(初音)を初音と本名で呼ぶ様になる。
実家の屋敷を出る際、1つしか持ち物を確保できない状況だったが、祥子が選んだのは「母の形見である西洋人形」ではなく、燈のメッセージと歌詞が記録されたノートであった(母の遺志よりもバンドという未来を取ったという暗示)。その人形はさながら彼女の亡き母の代理の様に、屋敷から出て行く祥子を見送る。
余談として、実父はアパート生活で立ち直りつつあるシーンが1カットあり。
初音の件でバンド活動が頓挫しそうになり、祥子のマインドは覚醒。
後日、バンドの再デビュー(事務所に属するメジャーレーベル活動の再開)に関するミーティングの席にて、睦と初華(初音)とは違い、祥子は「名字+さん」呼びしていたにゃむと海鈴を、初めて名前で呼び捨てにした(意識変化の明示)。
一連のムジカ関連の騒動に巻き込んだ迷惑に対して、燈に謝罪とお祈りの手紙を学校の下駄箱に残し、燈との友情のカタチを完全に清算・昇華した。
祥子は仲間4人に対して「この世界に神がいない(故に理不尽な困難・妨害に振り回された)のならば、私が万難を排する神になる」と宣言し、バンドの為に「利用できるもの(コネ、豊川)は全て利用する」と、動き出す。
時は流れ(去年9月20日に解散⇒今年10月18日が現在※)、再びメジャーレーベルでのプロ活動にて1万人規模のアリーナの大会場に復活していた5人。巨大なステージを埋め尽くす満員の観客。そんな中、4人の仲間を騎士として率い、自身を彼女たちが崇拝する女神と象徴する寸劇パフォーマンスから暗示される様に、彼女は「この仲間と共にいつか消える(終わる)その日まで」他の誰もが忘れても「自分達の思い出」として「この美しい時」を駆け抜けんとライヴステージの玉座にて星をイメージした神々しい光に包まれる。
なお、睦が手にしていた手鏡は「八咫鏡」で、初音のギターは「天叢雲剣」、祥子の玉座は「八尺瓊勾玉」という三種の神器に見立てられていた模様。
※某雑誌によると「同年の10月」らしい。どう考えても時系列というか、時間の流れが名探偵コナン時空レベルになってしまうが。全国ツアー初日の電撃解散から、約1ヵ月しか経過していないとなれば、1万人規模のアリーナ(G-WAVE)のスケジュールを確保するのは不可能だと思う。他シリーズキャラとの兼ね合いもあるからだろうが。
まあ、前編で燈が独りでアカペラやっていた時、ライヴハウス(RiNG)のステージ使用料(保証分のチケット代)をライヴハウス側に払っていた様子ないし、あのライヴハウスのシステムどうなってんだ、というのもあったが。手売りやネット販売で「チケット(売上-保証分=利益)」捌いている様子ないので、活動費とか凄まじく謎だ。
②高松 燈
前編主人公。感性豊かな歌詞と歌声を持つ。
その才能を祥子に見い出され、『CRYCHIC』結成のきっかけに。
心の拠り所にしていた『CRYCHIC』が、理由も分からず理不尽に解散になってしまい、心に深い傷を負う。一時期はバンド活動や歌う事に拒絶反応を示していた。
高校進学後、転校生・千早 愛音との出逢いにより、燈の歌への気持ちが蘇っていく。元メンバーであったドラムの椎名 立希とベースの長崎そよに、新メンバーとしてリードギター要 楽奈、そしてサイドギターを愛音が担当するカタチで、燈をヴォーカルとした新しいバンド(名前はまだ無し)が立ち上がる。
だが、バラバラで迷子だった5人。
そよの裏切り、愛音の離脱という不和を乗り越えて5人は本当の意味での仲間・バンドとなり――『MyGO!!!!!』という新たなバンド名と共に活動を本格スタートさせた。
③千早 愛音
前編のサブ主人公。登場時、ギターは初心者。
海外留学に挫折した帰国女子であったが、心機一転、日本の高校生活でガールズバンド活動をやろうと決意。転校先でクラスメイトとして燈と出逢う。
最初は自身を中心にギターヴォーカルとしたバンドを夢見ていたが、燈の歌を前にして考えを変える。初心者ながらメキメキと上達し、バンドのサイドギターを担当。
仲間のそよが『CRYCHIC』復活の為に自分と楽奈を切り捨てる計画だったと知り、ショックからバンドを離れてしまう。その後、(そよの自宅を訪れて)そよと本音をぶつけ合い、自らが復帰・復活したステージ上で、そよを引き入れて5人は「本当の仲間」となる。
④長崎そよ
ベーシスト。母子家庭だが母親の経済力で裕福層。
解散した『CRYCHIC』復活に固執して、新バンドを利用する。新メンバーの2人を目的が果たせれば切り捨てる予定だった、と立希に打ち明け、彼女の怒りを買う。
その後、新しい仲間と「本当の意味で」新バンド『MyGO!!!!! 』を結成。
メジャーデビューした『Ave Mujica』の武道館ライヴに愛音と共に行くが、そのステージでオブリビオニスの正体が祥子、モーティス の正体が睦であると知る事に。
覆面バンドであった『Ave Mujica』の正体――
ヴォーカルのドロリス:アイドルユニット『sumimi』の三角 初華
ギターのモーティス:人気芸人と大女優の娘として有名な若葉 睦
ドラムのアモーリス:YouTuberおよびマルチタレントの祐天寺にゃむ
ベースのティモリス:インディーズ界で有名なヘルプマン八幡 海鈴
キーボードのオブリビオニス:豊川グループの令嬢、豊川 祥子
その豪華な顔ぶれに人気は更に爆発した。
だが、睦の精神疾患(二重人格症状)が原因で、全国ツアー初日にて『Ave Mujica』は電撃解散。その後、そよ達は『CRYCHIC』解散の真実に辿り着き、睦の症状に向き合う。
自分達『MyGO!!!!! 』のリハーサル前に、(愛音と楽奈が下がり)祥子と睦を加えて「最後の」『CRYCHIC』を演奏し、そよ達は過去と決別して前に進んだ。
その時は『CRYCHIC』と真に決別したつもりだった祥子であるが、バンドを必要とする睦の為に『CRYCHIC』再結成を願い出るが、そよと立希の心が揺らぐことはなかった。
⑤若葉 睦
祥子の幼馴染にして、お笑い芸人「若葉」と大女優「森みなみ」の娘。
女優である母親が恐れる程の「演技の才能」を秘めた天才。その反面、ギタリストとしては機械的で今一つ、という評価であり、本人もそれを気にしていた。
バンドにギターとして参加していた動機は「祥子のため」
演技の才能には秘密、というか弊害があり、それぞれのケースでの演技が客観的に過ぎたが故に別々の人格が発生してしまい、自我を獲得した別人格がそれそれに言動を受け持っていた。つまり解離性同一性障害――多重人格者である。
旧バンド『CRYCHIC』では自分の演奏への評価に心を痛めていた為、『Ave Mujica』での活動には仮面が必要であった。しかし、にゃむの独断によって正体が明かされて、睦のストレスはステージやTV出演、取材の度に増大し、極限に達した時、統合された別人格モーティスに主導権を奪われてしまう。
モーティス人格はギターが弾けない為、『Ave Mujica』は解散に追い込まれた。
だが『Ave Mujica』復活に向けて動き出した海鈴にエアギターを仕込まれ、モーティス人格のままステージ復帰を目指す(バンドをしないと祥子が壊れてしまうかも、という危惧が発端=睦のためにバンドを復活させたいという祥子とすれ違っていた)。その後、他のメンバーの同調と願いもあり祥子は『Ave Mujica』復活を宣言。
再始動のステージにて、モーティスは睦人格に「己の死を差し出し」、2人の人格は1つに統合された事が、エアギターから生演奏への切り替えで示唆される。なお、演奏を取り戻した睦のギターは、以前とは異なり情熱を醸し出していた。
ギタリストと復活した後は、にゃむとの仲を深めている描写あり。にゃむの女優への夢を「正面からぶつかる」様にサポートし始める。
最終13話のラスト、睦が手にした手鏡に映る笑顔はモーティスのもの。人格として睦の裡に残っている(笑顔は鏡の中だけで睦自身は笑っていない場合)のか、人格統合しても睦にとって「モーティスという存在」は死んでいないという暗示なのか、それぞれの解釈に委ねられる描写(おそらく、どちらも正解)になっていた。監督談では、どちらの人格も消滅して残ったのは別人格=整合性を考えると「多重人格になる前の根源の睦」になるのだが、アニメ映像外なので好きに解釈すべき事柄な気もする。
⑥三角 初華(初音)
睦とは違う経路の、もう1人の祥子の幼馴染。
上京し、アイドルユニット『sumimi』のギターヴォーカルとして人気を博す。
祥子に執心しており、彼女が父と共に住んでいた安アパートを(父親のコンプレックスからの暴言が原因で)飛び出した後、初華は彼女を自分のマンションに同居させる。
バンド活動とは関係なく、自分が養ってでもずっと祥子と暮らしていたいと願う初華であったが、祥子は『Ave Mujica』解散後、祖父により豊川家に戻されてしまった。
祥子が「燈の歌」ではなく「自分の歌」を選んでくれた、と『Ave Mujica』復活宣言の時に感動し、一生を捧げると誓う。
本名は「三角 初音」であり「本当の初華(真・初華)」は異父妹。
実母と結婚した継父とは異なる初音の実父は、祥子の祖父。つまり祥子の叔母に当たる血縁関係である。祥子の祖父は豊川家の婿養子であり、妻を亡くした悲しみで、祥子の祖母に仕えていた別荘の管理人であった初音の母を関係をもち、初音が産まれる。
なお、初音が産まれた歳に祥子も産まれる。
不貞の子とは違うものの、豊川の直系(血縁がない)ではない初音の存在は、豊川一族にとっては忌み子であった。それでも祥子の祖父は、初音と初音の母を迎え入れる覚悟だったが、初音の母は身を引く(別荘の管理人および豊川家との関係を断つ)。
別荘のある島から出ないで、島の漁師と結婚した初音の母は真・初華=初音の異父妹を授かり、4人家族としてひっそりと生活していた。真相を知らない祥子と両親が別荘に避暑しに来ていた際、真・初華は「別荘に近づくな」という母親の言いつけに背き、祥子と交友を持ってしまう。そしてその後、初音は「初華のふりをして」祥子と面識してしまった。
漁師の継父が亡くなり、家庭に居場所を無くしたと感じた初音は、アイドルになりたいという真・初華の夢を利用するカタチで、島を離れて東京に出た。
保護者・身元保証人に実父の名を出すが、リアクションなしに初音は東京での生活および芸能活動を開始できる流れに。なお、祥子との再会を考え妹の名を騙った。
隠し子である初音の存在は豊川一族に知られる事となったが、黙認と不干渉で譲歩するという一族のスタンスに異を唱えた祥子の父は、一族を放逐される結果となる。
『Ave Mujica』復活のステージ後、黙認および不干渉のスタンスに変化が起こったのか、実父は初音に「(島に)帰りなさい」と告げる。その言葉に従い、初音は島に戻った。
実母と異父妹(真・初華)は本土(小豆島から香川県?)に渡っており、豊川の別荘の住み込み管理人に。高校も島の地元に転校予定であった。だが、祥子が単身で来訪してくる。初音は祥子に全ての秘密を打ち明けた。祥子に促されて、2人で東京に戻り、実父へ決別の意思を示す。なお、通名(芸名)は初華のまま。本名を知るのは仲間では祥子のみ。
12話での祥子との会話から、現状で初音は戸籍上は私生児あるいは継父と特別養子縁組をしており、豊川関連の相続権は保持していない(おそらく祥子が相続トップで、成人したら一族内で強固な発言権を得られる)。
祥子と秘密を共有した初音は、再び仲間4人と共にムジカのバンド活動を再開した。
⑦八幡 海鈴
凄腕ヘルプマンとして、インディーズ業界では知る人ぞ知るベーシスト。
通学している高校では立希と悪友的な間柄として描写されている。
約30ものバンド(活動中は10程)のヘルプマンをしており、その中には人気インディーズバンドも含まれていた。その出演料によって、それなりに贅沢な独り暮らしができている反面、ストレス発散の為にブランド品を爆買いする悪癖も。
太ましい母親の遺伝および肥満誘発な実家での食生活の影響からか、現在ではプロテインと栄養補助食品によるカロリー計算に余念がない(食にあまり興味がないという裏設定もあるらしい)。
立希の新バンドからベース(そよ)が抜けた時期に、1度だけ立希からヘルプを依頼されるが、そよを諦められない燈の心情を察して身を引く。
ヘルプマンとして複数のバンドを掛け持ちするのには理由があり、最初のバンドメンバーに裏切られた過去に囚われてのリスクヘッジだった。『Ave Mujica』でスケジュール調整は担当するものの、決定権を徹底してプロデューサーの祥子に委ねるのも、最初のバンドでのリーダーシップを非難されての影響(信用問題に対してトラウマ持ち)。
しかし不本意に解散に追いやられた『Ave Mujica』への想いが捨て切れず、その大切さを自覚した海鈴は、過去の自分を払拭するかの様に『Ave Mujica』復活に向けて動き出す。
海鈴自身の意気込みは空回り気味であったが、再びティモリスとして始動した。
バンド復活(5人の仲間再集結)後は、ムジカ一筋の強い想いの発露と、解散傾向や他バンドに対する浮気に対して過剰に反応する様になってしまう。
⑧祐天寺にゃむ(若麦)
人気の美容系YouTuberで新人マルチタレント。
本当は女優志望で、配信やタレント活動はその足掛かりであった。このままでは先は見えていると祥子からスカウトされて、バンド活動も始める。
『Ave Mujica』のドラマーとしては想定以上に成功していたのだが、睦の精神的トラブルによって頓挫してしまう。バンド解散後は元のタレント生活に戻るが、睦の演技の才能に惹き込まれてしまい、その幻影により役者としてのチャンスを棒に振る。
海鈴から『Ave Mujica』復活を持ち掛けられても、すぐには動けなかったが、睦への嫉妬が愛と憧憬の裏返しであると気が付く。自分には『Ave Mujica』しかないと思い直し、祥子に「人生を預ける」誓いを立てる。復活のステージにて、モーティス人格が睦の人格に統合されたと察したにゃむは、哀し気な表情を浮かべた。
その後、女優への夢を再開するが、演技の練習に関して睦に指導を受ける描写も。
⑨椎名 立希
ドラマーでコンプレックスを抱いている姉がいる。
『CRYCHIC』最後のピースであったが、やがて燈の事を第一に考える様に。
愛音とは最初、ウマが合わなかった。しかし、元『CRYCHIC』の仲間であったそよが愛音と楽奈を『CRYCHIC』復活に利用して裏切るつもりであったと知り、また立希と燈もそれ(裏切り)に同調すると思われていた事に激しい怒りを覚えて、そよを拒絶した。
『MyGO!!!!! 』の活動が順調である最中、『Ave Mujica』という居場所を失っていた海鈴を心配し気遣う描写も。
⑩要 楽奈
彼女だけ一学年下。野良猫ライクに気まぐれなギタリスト。
いつの間にか、気が付けば『MyGO!!!!! 』の仲間になっていた。季節が変わり高校に進学している(たぶん)が、ベンチに寝っ転がっている制服からして花咲川女子学園の中等部。彼女については総集編劇場版にて補完されている(バンドリ本編1期で閉店しているライブハウス『SPACE』オーナーの孫娘)。
オッドアイだが、一目見て睦が二重人格であると見抜く。
最終話、ラストソングの星空
燈、初音ともにプラネタリウムで星を観るのが好きである。
発達障害な燈にとっては「祥子は光」であったし、初音にとっての星空は、祥子と初めて見た夜空だった。最終話のタイトルにも星がある。
天空から降り注ぐ星の元で歌う初音。
対して、ホームグラウンドであるライヴハウス、バンドロゴを背景に飾らない演出で「いつも通り」の歌を奏でる燈。
2人の歌い手の「星と光」への答え。
燈は祥子とは別の道を歩み、祥子は初音とムジカの仲間たちと進むことを選んだ。
そんな、演出。
真主人公・祥子の心理変化を推察すると
①なんかスッゴイ感性の歌詞を描く子(燈)を発見! よし、バンド活動やろう
②バンド活動、クライシック、さいこー!
③親父が詐欺に引っかかって一族放逐されたけれど、死んだお袋の気持ちを思えば親父を見捨てられないから、お袋に代わって私も付いて行って支えなきゃ
④ちょっと多忙でバンド活動、モームリ、解散解散
⑤バイトだけじゃジリ貧乏だなぁ
⑥燈、新しいバンドを始めたのか。「春日影」はもう私への歌詞じゃないんだな。自分の手でバンド解散しておいて分かっちゃいたけど、眩し過ぎるぜ、そして惨め過ぎるぜ私
⑦ゴメン、そよ。復活を願う気持ちは嬉しいけど、金にならないアマ活動やってる場合じゃないし、もうメジャーレーベルでのデビューに向けて裏で動いているんだわ。そして燈、アマのお前とプロの私、もう交わらない運命だがグッドラック!
⑧ムジカでのバンド活動スタート! 信じられるのは自分の才覚だけ。親父を支えるだけじゃなく、ジジイを見返してやんぜ。お袋、天国から見守ってくれ
⑨にゃむのヤツ、予定外に正体をバラすとか、なんてことしてくれんだよ
⑩睦がなんと二重人格で、しかもメンタルクラッシュしてしまった。いや、これって私が強引にバンドに付き合わせたのが原因だよ、どうしよう
⑪おい、親父。なんだよ、お前の生活の為にも頑張っているのに、その言い草かよ。わかったよ、アパートから出て行けばいいんだろ!
⑫もう駄目だぁぁぁ、バンド解散! あぁ~~あ、また失敗しちゃったよ。初華にも迷惑かけたくないし、親父アパートに戻るか。そして睦の件、ど、どうしよう。でも当面はバイトで食い繋ぐしか道は見えない
⑬ジジイが違約金を払ってくれたのは助かったが、実家に帰る指示に逆らえなくなってしまった。というか、もう親父の面倒を見るの限界、ゴメンお袋
⑭色々疲れてしまったが、睦の件だけは自分の責任だから、どうにかしないと
⑮燈と、相棒のアノンだっけ? もう放って置いてくれないかな
⑯最後のクライシックとしての演奏。今から振り返ると普通の青春の1ページで、特別だと思っていたのは錯覚だった。私も若かったぜ
⑰え? あれでクライシック終わりだと思っていたのに、睦がこれからも継続してクライシックやりたいって、困ったなぁ
⑱恥を忍んでお願い、マイゴの皆さん、睦の為にクライシックも兼任してくれない? いや、私はクライシックは終わったって分かっているし、そっちに迷惑かけないから
⑲ムジカの面子が復活を申し込んできたが、そうか、睦はバンドなら別にムジカでもいいのか。バンドに誘った時に「人生を預けてくれ」と連中に啖呵を切った手前、最低限の責任は果たさないと
⑳なんか睦のトラブルはにゃむがメインになって解決したっぽい
㉑と思ったら、ジジイが初華を「初音」と呼んで、帰れと告げて、初華が姿を消してしまったよ。しかもジジイ、一方的に私にスイス留学を命じるなんて。バンドどうすんだよ
㉒よくよく考えたら、私がなにしたってんだよ! 大人の都合に振り回されて青春を邪魔されただけじゃねえか! スイスなんか行くか。よし、とりあえず初華を迎えに行く
㉓初華、いや初音にそんな秘密があったとは。とにかくバンドがあるから2人で東京に帰るぞ。もう状況に流されるのはゴメンなんだよ!
㉔ジジイ、私と初音はお前の所有物じゃねえんだ。ここから先は好きにさせてもらう。あ、屋敷じゃなくて初音のマンションで2人暮らしするから、ヨロシク
㉕持って行ける荷物、1つだけか。お袋の西洋人形はもういいや。もう好きにするって決めたからな。悪いな、お袋。ってかジジイ、親父の面倒は義理の父親であるお前が見ろ。私はお袋の死のしがらみより、これからのバンド活動、ムジカを選んだ。だから歌詞ノートを持って行く。それが私の決意の証
㉖置手紙での謝罪で悪いが、色々とゴメンな、燈。私の自分勝手とムジカのドラブルで振り回して。お前を傷付けたこと、許してくれ。今度こそムジカを成功させてみせる。マイゴも上手くいくと良いな。そしてお前の未来に幸多からんことを祈るぜ
㉗よっしゃ、みんな揃ったな。にゃむ、海鈴、睦、そして初音よ、ようやく私もしがらみを吹っ切って、色々と目が覚めたよ。神が実在していないからクソみたいな他人の事情で邪魔されていたと思う。ならば私が神となってムジカの障害を全てぶっ潰すから
㉘事務所の社長さん「初華を復帰させて『sumimi』の活動を再開させたい」のだったら、私の要求を呑んで『ムジカ』再デビューに手を貸してくれない? ジジイの許可? 問題ない問題ない、まだ未成年だけど婿養子のジジイとは違って私は豊川の直系だし、こうなったら親族で同じ直系の有力者を味方に引き入れてジジイに圧力をかけるから。『ムジカ』がセールス的に成功したら、誰も文句を言えなくなるし
㉙いつか消える日(終わりの時)まで、私達『ムジカ』は美しい日々を駆け抜けるぜ! この豊川祥子に付いてこい、私の仲間達よ!
真・初華についての深読み
一部の視聴者は「初音の主観に引っ張られて」解釈してしまっている模様。
祥子に会う為に、異父妹の名前とアイドルの夢を奪ってしまった、と初音は自身のウソについて大きく苦しんでいる。だが、そこに真・初華の視点は不在だ。
真・初華の視点から見れば――
〇姉が家出して所在不明になってしまう
〇どうも実父に身を寄せている模様
〇詳しい事情は分からないが、島から本土へ引っ越し
〇アイドルユニット『sumimi』を知ったら、片方が姉だった
〇なぜか自分の名前を芸名にしている、ホント、なぜ?
〇ってか、姉ってアイドル志望だったっけ?
〇家出の目的は、ひょっとしてそれ?
〇芸名については姉として自分の夢を引き継いだつもり?
〇でも姉から連絡こないなぁ、わかんないなぁ
〇連絡先は知らないし、姉はまだ自分と母を許していないのか
〇あれれ? 姉はバンド活動も始めていた
〇なんか、バンドに祥ちゃんもいるんだけど
〇姉に連絡とりたいけど、祥ちゃんの連絡先も知らなかった
〇解散したと思ったら、バンド復活した
――ぶっちゃけ、真・初華視点だと「恨む」「復讐する」とかいう情報はない。家出して連絡先不明の異父姉が、なぜか自分の名前を芸名に使って、アイドルとかバントやっている、くらいである。実際、最終13話で真・初華は未登場どころか欠片も言及されなかった。
12話の燈への手紙は恋文なのか
なんか、これも深読みした解釈がチラホラと。
祥子は元からして格好つけだし、燈が先に「下駄箱付箋」を繰り返してくれていたから、その締めくくりとして「下駄箱レター」という手段をとったと思われる。
笑える考察だと、燈は思い込みで突っ走るから「解決した」と手紙で報せないと、再び一方的な下駄箱付箋攻撃をやりかねないので釘を刺した、だ。確かにこれが最も燈という人物を的確に捉えた考えである。
ってか、祥子はレズだとは思えないのだが。
両方(双方の性格と、下駄箱のやり取り)を知っている愛音からすれば「直に会って会話すればいいのに、面倒だなぁ」という感じであろう。下手をすれば「転校して会えなくなるわけでもないのに、あの子の厨二病な言動を真面目に相手すると疲れる、もうテキトーでいいよテキトーで」と思っているかもしれない。
監督がコメントした裏設定によれば「祥子は初音の(自分に向けた)歌詞に驚嘆を受けた」から、あの10話での表情と視線らしい。世界観設定とかメカ設定をアニメ映像外の媒体で解説はありだが、モー睦の人格といい、キャラの心情とか考え方はアニメ映像内のみで表現すべきだと思う。10話の祥子の様子(初音への視線と表情)から「初音の歌詞、凄い」と内心で思っているとか読解できる視聴者はゼロだよ。
12話の手紙が「燈への『最愛の貴女を諦めて別のバンドに行きます』という恋文」とかいうトンデモ解釈は別にしても。にゃむと海鈴を呼び捨てにした時点で、燈と過去バンドは割り切っているのは察せられる。燈の歌詞は凄い、から、初音の歌詞は凄い、にサクッと鞍替えまでは欠片も想像できなかったが。
初音はレズではない
いわゆる百合好きな層が、祥子・燈・初音を恋愛的な関係みたく想像していた様だが、歌とバンドで繋がっているだけで、この3人って同性愛者ではない。まあ、燈は『メダリスト』のいのりさんと同じく明らかに発達障害であるが。
初音が祥子に抱いている情愛は、血が繋がっている存在の筈なのに、自分とは違って高貴なお姫様――的なアレであろう。おそらく祥子は「どうして初華(初音)は、ここまで自分に拘泥するのか」と第12話で彼女の秘密を知るまで、薄気味悪いとすら感じていたのでは? 秘密を知って、ようやく合点がいったというか。
初音は家族愛に飢えており、実母と異父妹には疎外感を感じて家出してしまった経緯があるので、血を分けている祥子に執着するのは自然な流れだ。不健康な精神状態だが。
睦とモーティスの人格については
前途した通り、正解は各自の解釈で良いと思う。というか、どちらが正解であっても物語の意義として大局的には変わらないし。
それでも「共存説」と「統合説」のどちらが優勢かと問われれば――
・10話の演奏時、にゃむの表情
・13話のラスト寸劇の真意
大雑把に解釈すれば、睦は多重人格化する前の自分に戻っている状態で、かつモーティスをはじめとした「内なる自分の存在」を認知していると考えられる。元の睦にとってもモーティスであった自分も、もう1人の自分だ、というところか。
監督さんの解釈では、派生していたメイン睦は死亡済み、10話でモーティスも後を追って死亡、で残ったのは「本当の意味での」オリジナル睦。だから常時どんな役割でも最適にこなせる(意訳――だそうだ。記憶さえ引き継いでいれば、それはそれで原点回帰なのかな、とも思う。多重人格症状としては完治だし。
サブタイトル比較
第1話――マイゴ「羽丘の不思議ちゃん」
ムジカ「身バレしちゃった!(和訳」
第2話――マイゴ「もう誘わない」
ムジカ「壊れちゃった!(和訳」
第3話――マイゴ「CRYCHIC」
ムジカ「飲まれちゃった!(和訳」
第4話――マイゴ「一生だよ!?」
ムジカ「解散しちゃった!(和訳」
第5話――マイゴ「逃げてない!」
ムジカ「乗り込んじゃった!(和訳」
第6話――マイゴ「なんで今更」
ムジカ「葛藤しちゃった!(和訳」
第7話――マイゴ「今日のライブが終わっても」
ムジカ「演奏しちゃった!(和訳」
第8話――マイゴ「どうして」
ムジカ「誘っちゃった!Q(和訳」
第9話――マイゴ「解散」
ムジカ「死んじゃった!(和訳」
第10話――マイゴ「ずっと迷子」
ムジカ「復活しちゃった!(和訳」
第11話――マイゴ「それでも」
ムジカ「嘘ついちゃった!(和訳」
第12話――マイゴ「It’s my go!!!!!」⇒前編最終話
ムジカ「神になっちゃった!(和訳」
第13話――マイゴ「信じられるのは我が身ひとつ」⇒後編序章
ムジカ「苦難の果てに、星になっちゃった!(和訳」
前編は、業を背負わぬ少女たちの序奏
『MyGO!!!!! 』の5人は、家庭のトラブルとか生活のピンチとかは抱えておらず、女子高生(1人、女子中学生だが)として問題なく日常を過ごせている。
バンド活動にしても、箱のチケット代で多額の借金を背負う、とか重たい話はない。
「なぜ祥子は『CRYCHIC』を一方的に終わらせたのか」「祥子と初華の関係」「初華と邂逅する燈」と「立希と海鈴の間柄」――後編へのピースは散りばめられていた。
後編の主人公であり真主人公である祥子が、燈の歌が自分ではなく「新しい仲間」へ向けられたモノへと変わった事に傷つく様や、その別れ道の後に『CRYCHIC』復活にすがるそよを拒否、そして新たなるステージへと進まんとする裏ストーリーが仕込まれていた。
しかし表向きのストーリーは、前編サブ主人公である愛音が「バンドを作る」というシンプルな代物であると言えよう。
前編主人公の燈は、その性格の特殊性から「歌詞を作って歌う」ことしかしていない。
極論するまでもなく、純粋にそれだけのキャラだ。
バンド解散に傷付き、もうバンドは嫌だとなり、でも愛音に促されて(そよの策略も込み)再び新しいバンドを始めるも、そよの裏切りでバンドがバラバラになって、やっぱりバンドは嫌だったから、それでも思い直して孤独に再出発した自分1人の歌(詩)で仲間が本当の意味で繋がった。
燈視点だと、それだけである。
後編にて、主人公の座から降りた燈は、目的と情熱を見失ってしまった祥子に対して「バンドやろう」としか言えなかった。そもそも豊川の屋敷に到達できたのも、愛音が機転を利かせたからであり、ぶっちゃけ、本当に燈は「なにも出来ていない」のである。
この前編で5人は前に進んで「絆を結んだ(異世界レッドみたいだ)」が、じゃあ、人間的に成長したのかと言えば、個人的には愛音とそよの2人だけだと考える。
特に、そよ。
後編において睦の世話を焼き、あれだけ縋っていた『CRYCHIC』復活の依頼について「もう過去の事で、睦の為にならない」と難渋を示す。
立希は良くも悪くも完全に一貫している。
悪い事は悪い。間違っている事は間違っている。燈が大切。海鈴との友人関係も適切な距離をキープ。その上で、変に背伸びして大人ぶらない。
背景が不明で、謎(情報未開示)が多く散りばめられており、サスペンス的に人間関係が交錯しながら絡み合っていくが、『MyGO!!!!!』5人の物語として切り取れば、意外にもそこまで複雑・難解ではない。
後編を意識した過去回想話をスッキリさせれば、もっと尺は省ける。テンポは良くできる筈なのだ。エクスキューズへの演出として機能している反面、前編の構成は少しだけ間延びしている印象さえあった。燈のデモデモダッテ的な側面の表現には有効であったが。
金銭面には触れず、家庭の経済面もノータッチで、ライヴハウスでの活動に関してもクリーンなアマチュア活動という感じで描写されている。グッズやCDを販売という場面もなかった。インディーズレーベルで利益云々も分からない。
演奏技術に燈の歌唱も、あくまでアマチュアで上位、プロレベルには達していないという風に、描写も徹底されていた。これは高校生の青春物語であるのだ、と。
後編は、業を背負った少女たちによる本奏
12話で前編は綺麗に完結している。
ここで『It’s MyGO!!!!!』の物語として単体で締めて欲しかった、というファンもいた。それだけ「迷子の彼女たち」のストーリーと彼女たち5人はファンに愛された。
しかし、無情かつ無常にも「物語は綺麗なまま」終わらない。
主人公が代わる。
祥子という「本当の主人公」が動き出す。
前編12話の背後に配置されていた『Ave Mujica』の5人がお披露目だ。
さあ、ここからが真の物語だよ、と。
ムジカの5人は業を背負っている。
バンド活動を除けば普通の女子高生であるマイゴの5人とは対照的だ。誰1人として「普通の生活」をしていない。バンド活動もアマチュアや趣味の範疇ではなく、メジャーレーベルのプロとしての活動だ。
時間の流れどうなってんだ、というツッコミは置いておいて、史上最速で武道館に到達してソールドアウト。その勢いのままに全国ツアーという凄まじさだ。『MyGO!!!!!』のSNSアカウントの様子から、彼女たちは人気アマチュアのままという対比も徹底されている。
青を基調としたアマチュア、赤を基調としたプロ。
「一生いっしょにいたい」5人と、「いつか来る、避けられない終わりの時まで駆け抜けんとする」5人。
理解し易い構成・キャラ心理である前編と、相当な読解力が要求される後編。
曲調とタイトルも対局にある前編と後編。
構成も変えてある。ゆったりと、しかし緩急を活かして物語が流れていく前編とは異なり、後編の方はジェットコースターのごとく激しい。1話ラストの正体明かしから、あっという間の解散、そして睦の迷走、にゃむの葛藤と海鈴の決意――
主人公である祥子は超が付くレベルで有能な反面、完全にサークルクラッシャーであり、睦の心を案じる以外は「余裕をなくして」いく。睦以外のメンバーの気持ちを慮れない程に。
第10話にて初華が書いた歌詞が、祥子に向けての気持ちだと分からない筈がない。
だが「春日影」の歌詞とは違い、祥子に届いている様には見えなかった。
メンバーの気持ちはバラバラのまま。
視線は重ならず、想いはすれ違い、けれどもプロとして完璧な演奏――
感動ではなく、圧倒的な凄み。
『ガルクラ』の「空白のカタルシス」とは違うベクトルでの圧倒感。
ぶっちゃけ、ほぼ棒立ちで突っ立っているだけの『MyGO!!!!!』のステージとは違い、演奏時のパフォーマンス自体、次元が違う。特に『MyGO!!!!!』はキーボード不在で、ヴォーカルはギターでができなくて『Ave Mujica』より演奏の表現幅が狭い。
青の『MyGO!!!!!』と赤の『Ave Mujica』は徹底的に対比が意識されているのだ。
復活のステージ後、まさかの展開に。
初華(初音)の正体については、割と推理しやすく伏線が貼られていた。
今までは豊川グループが初華(初音)の芸能活動と『Ave Mujica』を陰からバックアップしていだろう、程度は想像に難くない。だが、一族内の方針が変わったのか、初華(初音)の島への帰還と、祥子のスイス留学の命令。つまり『Ave Mujica』の解散を促してきた。
初音の秘密が明かされた11話であったが、真・初華は2歳差としても、ソックリな姉妹にしても2歳差の成長分ってかなり見た目に差があるのでは? よほど異父妹(真・初華)は発育が良かったのだろう。
自分達の都合ではなく、今度は大人の事情により再びバラバラにされそうな『Ave Mujica』
前編の11話は、徹夜で手作りのステージ衣装を作っていた、ほのぼの話だったのに。
この対比っぷりというか、本当にマイゴの話は前座だったのだと強く実感だ。
で、12話なのだが、『もめリリ』のSF設定の理解度と同じく、視聴者の読解力(リテラシー)は大丈夫なのか、と心配になる。
初音は浮気(不貞)の子じゃねえよ。奥さんが亡くなった後の悲しみ故の関係だよ。妻が生前からの不倫ではない。仮に初音が「不貞(浮気)」の子だったら、その時点で祥子の祖父は豊川一族から放逐されている。
それから初音の名前は「甘神三姉妹と同じ」だ。通名・甘神 夜重(戸籍の本名:一乗寺 澪子)、通名・甘神 夕奈(戸籍の本名:鞍馬 撫子)、通名・甘神 朝姫(戸籍の本名:清水 美雪)と扱いは同じ。公的な書類(運転免許証とか)は「三角 初音」表記になるが、それ以外の書類は初華表記で問題ない。
賛否両論って感じの第12話だが、前後編合わせての全26話の真主人公は祥子なのだから、主人公覚醒のクライマックス回、この流れで良いと個人的には思った。
前編の5人と燈に思い入れ強いがファンには逆バイアスが掛かっている感じたが、極論すると全26構成において俯瞰すると、燈は完全に前座主人公で、真主人公・祥子が成長および覚醒の為のファクターであった。
謝罪の手紙で、燈とは精神的に決別している。
燈はともかく睦の事情も知っている愛音とすれば「いっつも仰々しいなぁ」っていう感じだろうが。愛音的には大袈裟に決意表明しないで、なぁなぁで友達関係を細々と継続すれば良いのでは? という感じかもしれない。
初音の実母と異父妹(真・初華)は離島を離れて本土(小豆島から香川県?)で暮らしている。時期的に初音と入れ替わりだ。いずれ初音を離島の別荘の管理人に戻す為の、豊川一族の処置かもしれない。
真・初華は異父姉そっくりなルックスはともかく、歌唱やギターの演奏は初音に遠く及ばないのだろう。というか、『sumimi』『Ave Mujica』の存在を知ってしまえば、アイドルの夢を諦めざるを得ない。
覚醒した祥子は再びメジャーレーベルでのリスタートを決断。
権利関係は祥子が抑えているだろうから、ライヴハウスでの独断ワンマンライヴ(1000人以下の箱)は10話にて可能だったが、本格プロ活動に関しては事務所とスポンサーのバックアップが必須だ。
そして祥子は元の所属事務所に『sumimi』復活を餌に支援を要求する。自分は「豊川祥子」だ、と。婿養子の祖父とは違い豊川の直系で後継者の1人だと示唆だ。
最終回となる13話は、全て歌(音楽)で表現していた。
『マイゴ』の面子は、燈の歌詞とMCスタイルによって「過去には戻らない。時は流れていくし、この5人で進む」と明白に示した。
ライヴハウスで人気アマチュアらしい演奏、かつ5人で手を繋いで締めの挨拶。最後の声掛けは燈が拙く、であるがちゃっかりと愛音がセンターを横取り。しかも立希が燈の手を取ろうとするのをインターセプトだ。楽奈もいつの間にか立希を「りっきー」呼び。
『ムジカ』の面子は、最後の曲「天球(そら)のMúsica」の演出で、いつか消えてしまう日々だけど、美しい時(思い出)として5人で歩いていく、と決意表明だ。
最後の寸劇は視聴者へのメッセージ性が強く、最後、1人孤高の玉座に位置する祥子はキービジュアル通りに「仲間を率いる」女神となる。
バンドアニメにしかできない締め方だと思う。
――で、続編制作が発表された。
ちゃんと読解できれていれば各個人の問題は全て解決済みだから、今度はバンドとしての危機や問題に面していく展開になるのかな? 特に『マイゴ』の方はメジャーレーベルは無理にしてもインディーズレーベルでの商業云々にステージアップするか否か、という選択はいずれ迫られるだろうし。