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【なんちゃってYAWARA】戯れ言――スポーツ選手のプロデュースと報道について【天才・辰吉とインチキ亀田三兄弟】

【なんちゃってYAWARA】戯れ言――スポーツ選手のプロデュースと報道について【天才・辰吉とインチキ亀田三兄弟】

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さあ、戯れ言 記事 ゴト を始めようか――

 

 

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えげつない記事――なんちゃってYAWARA

その記事のタイトルは『 YAWARAちゃん超えた! 柔道最強女子の美貌に世界中が騒然』である。公開日は2018年9月23日。

記事のリンクを貼っておこう。

www.nikkan-gendai.com

この記事で「超えた!」と云っているのは、田村(現・谷)亮子氏の記録(世界選手権を初制覇した年齢を1才更新)を指しており、アニメも大成功(実写化もされている)した不朽の名作漫画『YAWARA!(著:浦沢直樹)』の主人公である猪熊柔ではない。

というか、猪熊柔は無差別級で無敗だった。超えるのはリアル人類には無理だ。

このスポーツ記事の残酷なところは、9月20日に行われた柔道世界選手権女子48キロ級で優勝したダリア・ビロディド(17)選手を【リアルYAWARA】と持ち上げているくだりとは、ちょっと違う。報道されている写真や動画を確認すれば分かるが、確かに凄い美女だ。このままモデルとして通用する。

 

で、なにが残酷かというと、田村(現・谷)亮子氏を【なんちゃってYAWARA】とネタにしている点に他ならない。悪意丸出しである。

 

むろん谷氏が世界の柔道史に刻んだ柔道家としての偉大な功績を『なんちゃって』等と卑下できる筈がないだろう。『なんちゃって』という箇所は、流石にダイレクトには云えないので、察して欲しい。

 

谷氏も今や大人の政治家であるので、このスポーツ記事を目にしたくらいで目くじらを立てたりはしないだろう。仮に内心で怒り心頭でも、リアクション起こした時点で、公人としての世間の好感度が下がるからだ。けれど、有名税とはいえ若かった頃の谷(当時は田村)氏がこのスポーツ記事を読めば、流石に傷付くのでは? と思ってしまった。

 

谷氏が自ら己の愛称を『YAWARAちゃん』と普及させた事は、割と有名である。

猪熊柔に髪型を似せていたし、人気作品に便乗という普通にセルフプロデュースの一環だ。その愛称が世間に浸透して知名度アップに役立ったのだから、成功といえる。

 

当時は、今と違いネット環境が一般化していなかった。

だから表立って谷氏のセルフプロデュースに対する批難は上がらなかったのだ。別に批難される謂われはないのだが、目立てば批難も発生するのが現在のネット社会だ。

 

ただ、ネットが普及して以降――谷氏の活躍と知名度も落ちていなかった為が故に、愛称『YAWARA』について、ネット界隈でツッコミが起こりまくった。

本気で憤慨している暇人は皆無だろうが、ネット界隈では『YAWARA(柔)』ではなく『TAWARA(俵)』という俗称になっており、それにちなんだコラ画像も出回る始末である。

 

けれど谷氏の柔道家としての偉大な功績にケチをつける声はなく、そういった意味においては良くも悪くも真実を突いているのだなぁ、と。

つくづく思う。ネットが普及する前は、マスコミが『YAWARAちゃん』と宣伝すれば、他の意見など表に出ず、世間もそれで騙せて(洗脳できて)いたのだ。

 

天才ボクサーと喧伝された辰吉丈一郎

より生々しい方向へ話題を移そう。

扱うのは辰吉丈一郎(元WBC世界バンタム級王者)。ご存じ、今でも抜群の知名度を誇る日本ボクシング界のカリスマ的存在だ。ボクシングの井岡といえば、今は一翔(元3階級王者=WBA・WBCミニマム、WBAライトフライ、WBAフライ)を指し、元2階級(WBCミニマム、WBAライトフライ)王者の井岡弘樹は井岡叔父と呼ばれるようになったが、かつて井岡は弘樹の甥と呼ばれていた。ボクシングの井岡といえば弘樹だった。しかし今でも辰吉といえばジュイキではなく、まだまだ父の方がネームバリューが遙かに上だ。

 

アマチュアでの活躍。

4戦目での日本タイトル獲得。8戦目での世界タイトル獲得。

そして『浪速のジョー』という通称が嵌まり、パフォーマンスも受けた。キャラクターも立っていたし、全盛時には誰よりも華があった。

そして何よりマスコミが大衆向けに仕立て上げやすい『物語性に溢れた生い立ち』だ。

加えて、眼疾という悲劇。そこからの復活劇。

 

マスコミによる辰吉の売り出しは、過去にない大成功を収める。

 

日本ボクシング界を背負う悲運の天才ボクサー。

そう……。ネットが普及していなかった当時、コアなボクシングファン以外は、割と本気で皆が辰吉は天才、辰吉はバンタム級最強――とマスコミに踊らされていたのだ。

 

WOWOWでの放映はあったものの、現在みたいに様々な動画まで検索・閲覧できない世の中では、マスコミが天才ボクサーといえば、日本人の大半は天才ボクサーだと信じちゃっていたのである。

 

コアなボクシングファンは『才能はあるし天才っぽいけど、決して天才じゃない』『バランスが悪い』『パンチが手打ち気味』『勘とヘッドスリップに頼るから、後半は相手に読まれて顔面ブロッカー』『実相はトーレスとどっこいどっこい』等々――

 

相手を研究して対策を立てられないという致命的な欠点もある。毎回、同じ様なボクシングして、同格以上には似たようなパターンで攻略されていた。WBCタイトル獲った相手も、穴王者のリチャードソン、ラバナレス(再戦)は地元判定だったが許容範囲内、タイの魔法の秤の加護なしで半病人状態だったシリモンコン。

全キャリアを通じても、運良く負傷判定で勝てたアヤラが目立った勝ち星だ。薬師寺に封じ込まれ、サラゴサには子供扱いされた。辰吉は世界レベルでは強打者には程遠く、世界戦でダウンを奪えたのは、半病人のシリモンコンのみである。

このレベルの戦歴のボクサーを、当時のマスコミや日本ボクシング界は『世界でも』天才だと持ち上げていたのだ。確かに東洋レベルでならば、天才で間違いではないが。

 

そもそも当時のバンタム最強はIBF王者のカニザレスだと、周知だった。

 

『アンタッチャブル』の異名を誇った『当時の日本ボクシングレベルでは』ディフェンスマスターであった川島郭志(元WBC世界Sフライ級王者)でさえ、ペニャロサに通用しなかった。視力の問題はあった(だからキャリア後期は連打の命中率が悪かった)にせよだ。あの時代としては、川島は日本人世界王者の中では破格の技巧派だった。

 

けれど、辰吉は知っていても川島を知らない――なんてニワカが多かったのだ。

 

マスコミに踊らされるニワカを否定したくはないが、最低限の知識くらいは付けてから、世に発信して欲しい。

JBCが世界四大タイトルを公認してから時間が経ったというのに、未だに『認定団体』と『運営団体』の区別がついていなかったり、WBA、WBC、IBF、WBOの権威に優劣があると勘違いしている者さえいる。全部同格だっての。

 

マスコミに堕とされてしまった亀田三兄弟

手法は辰吉ブームを演出した時と、大して変わっていなかったと思う。

マスコミが主導した亀田ブーム。

長男・興毅、次男・大毅、三男・和毅と、父親の家族物語。

 

確かに一時期は成功していた。人気低迷していたボクシング界の光だった。

タレント性に溢れたボクサーが大勢いた90年代のブーム復活なるか――

 

が、もはや時代そのものが変わっていたのだ。

 

辰吉時代の手法は時代遅れとなり、通じなかった。

90年代にあった輝きは戻らなかったのである。

 

ネットが普及して、マスコミ以外からも様々な情報を大衆が得られ、そしてそれを拡散できる世の中になっていた。

今では『天才ボクサー辰吉はマスコミによる幻想で、亀田と同時代に辰吉が存在していたら、亀田以上にボロクソに叩かれていた』とさえ云われている。マニアには『辰吉が亀田と戦ったら、長男と三男には間違いなく惨敗する』とも。

亀田ブームは長続きせずに、そしてマスコミは彼等に手の平を返した。

おそらくは多くのスポンサーも。

象徴的なのが以下の事件だ。

TV局の為に体重超過の相手とIBFタイトル防衛戦(本来は統一戦だったのだが、相手のソリスがWBAタイトルを剥奪された)をさせられた被害者である大毅が、何故か悪者扱いになり、挙げ句の果てにJBCから亀田家が追放される(後に和解)という不可解な現象までまかり通ってしまった。この時の体重超過は、『神の左』山中慎介(元WBC世界バンタム級王者)と対戦したルイス・ネリの体重超過どころではない。ネリは2度目の計量で約1.3キロオーバーまで減量を継続したし、当日計量も受けてクリアした。山中とネリには当日体重に左程の差はなかったのだ。しかし大毅と戦ったソリスは、IBF規定の当日計量までボイコットした。IBF規定でリバウンド幅を抑えた大毅と、前日計量および当日計量まで失格だったソリスとでは、コレ試合をさせてはダメだ、と一見して分かるくらいに肉厚に差があった。で、大毅は判定負けに終わる(体格差があり過ぎて、序盤KO負けしなかったのに驚いた)のだが、挑戦者が体重オーバーなのでIBF王座が移動する筈がない――のに、マスコミは「負けても防衛」「救済処置」と、まるで大毅が悪かったかの様な報道。さらに一部の悪質な連中は「反則してでも亀田を倒したソリス、偉い!」とまで言い出す始末。被害者である大毅はタイトル返上および謝罪声明を出す羽目に。挑戦者の計量失格の時点で防衛確定(常識的に当たり前だ。王者側が計量オーバーなら王座剥奪だし)なのだが、TV番組の都合上、視聴者の緊張感を煽る為に『勝てば王座統一、負ければ王座を失う』とやってしまったのもある。普通に考えて責任は番組プロデューサーだ。そしてコミッションであるJBCが仕事をしていれば、そんなテロップ詐欺は防げた筈なのだが。全ての責任(というか不都合)を亀田家に押しつけて、この事件は幕を閉じた。当時のIBF関係者は揃ってJBCとTV局に呆れていただろう。

そんなこんなで、結果、失敗どころか、亀田三兄弟はアンチによって日本ボクシング界の汚点扱いである。世間の反感および時流を読み違えた亀田家にも非はあるが。お陰で和毅は2階級制覇の目前で試合枯れだ。

 

自業自得な面もあると思うが、辰吉の時代だったのならば、亀田三兄弟は辰吉を超える日本ボクシング界のヒーローになっていただろう。

実際、どんなにマッチメークを頑張ったところで、弱い選手だと東洋タイトルが精一杯であるのだ。後に唯一ともいえる例外が1つだけ爆誕してしまうが(苦笑。また、マッチメークではなく、王者側の自爆でラッキー的に王座獲得できる事も世界では稀にある。

三兄弟揃って世界戦で複数の勝ち星をあげられる時点で並ではない。兄弟の世界タイトル獲得は多くあるが、三兄弟となると彼等だけなのだ。

亀田興毅=WBAライトフライ、WBCフライ、WBAバンタム。

亀田大毅=WBAフライ、IBFスーパーフライ。

亀田和毅=WBOバンタム。

この三兄弟で6本の世界のベルトを獲得している。しかも3名ともKO負けが1度もない。大毅は全キャリアを通じてダウン0だ。普通に偉業の筈である。

 

日本人世界王者という範疇――ならば、大毅は中の下かもしれないけれど、興毅と和毅は上位レベルにはあるボクサーだ。そんな彼等がアンチに『日本王者レベル』とまで一時期はこき下ろされていたのだから、その嫌われ振りは相当といえる。

皮肉にも、素人目にすら明らかに亀田三兄弟よりも酷い日本人世界王者(および世界タイトル挑戦者)が何名か誕生した事により、流石に今では実力そのものを不当に貶めるアンチはかなり減った。

スーパー巧妙なマッチメークと超強運に後押しされて世界を獲った某WBA王者に至っては、知名度皆無(しかもKO奪取)なのに全方向から罵倒(いくらなんでも弱過ぎだという批判)の嵐であった。ライト層ではなくコアなボクシングファンの方が(世界挑戦が決まった段階で)怒っていた。むろん大方の予想通りにV1戦でワンサイドのTKO負けだ。本当に同時代の日本王者よりも弱そうな世界王者は彼一人であろう。日本人世界王者で歴代最弱の声が高かった越本隆志(元WBCフェザー級王者)ですら、日本・東洋圏内では敵なしだったのに。

 

ソリス事件の影響もあり海外での活動を強いられた興毅、大毅ともに環境に恵まれず『全盛期が不明』のまま、対戦相手にではなく世間からの逆風に負けてしまった形でフェードアウトしたのは、個人的に惜しいと思う。

 

彼等とは逆に、マスコミの売り出しに上手く乗れて、絶大な人気を獲得できたのは『平成のKOキング』坂本博之(日本&OPBF元ライト級王者)か。本人が人格者な面(引退後の活動も素晴らしい)も大きかったが、売り出し方とキャラ(ファイトスタイルも含めて)が絶妙に嵌まった好例だった。4度も挑戦したが世界は獲れなかったし、世界レベルでは決して強打者でもKOキングでもなかったけれど。

坂本は今でも無名な世界王者よりも知名度がある。

ボクサーとしての技術レベルは亀田三兄弟より遙かに下。世界レベルではド下手な部類だ。ぶっちゃけ、世界戦だと単なる扇風機だった。全盛期は日本王者の頃で、明らかにフィジカル頼りの早熟タイプだった。

しかし、世界タイトル以外の全ての面で、坂本は亀田三兄弟よりもボクシングというスポーツから得られるモノを得ている――と感じる。

 

近年で現役だと、『リーゼントボクサー』『拳闘番長』で上手くセルフプロデュースしているSバンタム級世界ランカー、和氣慎吾を思い浮かべる。

一時期、契約トラブル等で危うくフェードアウトしかけたが、世間に対して自分の売り出し方が実に上手い。

世界王者を獲得する前から無名の日本人世界王者より、いい暮らしをしているし。

ただ、和氣は番長キャラだけど左カウンターと前後のステップが武器のアウトボクサーだったりする。亀田興毅がキャラ作りに成功していれば、和氣みたいになれたのかなぁと思ったりして。興毅のやんちゃ系キャラが少々痛々しかったのに比べて、普通に好青年のまま爽やかに番長キャラを演出している和氣は、地頭が良いのだろう。

OPBF王座に続き、日本王座も獲得。グスマン相手の世界戦は失敗に終わったが、それを糧にできれば、充分に世界王座に手が届く期待のボクサーだ。

 

情報化社会への変化と大衆の価値観の推移

90年代以前はマスコミが『強敵』『世界ランク1位』と報じれば、大衆もそれを信じてくれたし、ネットで裏を取られたり詮索(検索)されもしなかった。

だから世界王座の防衛回数に価値があったのだ。

そしてバッサリと斬ってしまえば、90年代以降というか、2000年代前半より以前の日本人ボクサーは、現在の日本人ボクサーよりも明らかにレベルが低い。

 

スポーツなんだから、そりゃあ、当たり前といえば当たり前だが。

昔の選手の方がレベルが高かったら、そちらの方が大問題である。

 

昭和のプロ野球選手が、今のNPBで一線級の活躍ができる筈がないのと同じ理屈だ。

昔はプロの速球派投手でも150キロ超えが珍しく、今みたいに高校生でも150キロ超え投手が世代に複数人出るなんてレベルではなかった。

今は昔とは違い、世界超一流の動画が何時でも視聴できて、トレーニング風景さえも公開されている。かつてのブラックボックスが解明されて、最先端のノウハウを吸収できる者は、飛躍的に伸びていける――そんな時代。

 

ボクシングも同じだ。 

 

先に辰吉と亀田が試合したらと述べたが、90年代の辰吉が亀田に勝つ方がおかしい。

具志堅と亀田が戦ったら亀田が勝つに決まっている。

というか、具志堅はフライではプロは無理だけど新設のライトフライでなら――という選手なので、亀田どころか八重樫東(元3階級王者=WBAミニマム、IBFライトフライ、WBCフライ)にも普通に負けるだろう。具志堅が強くみえるのは、新設階級で挑戦者のレベルが低かったからに他ならない。

ちなみに、2000年以降のフライ級日本人世界王者で『フライ級での』全盛期比較をすると、個人的な評価ではこんな順番になる。あくまでフライ級でタイトル獲得した者限定だ。

 

①田中(WBO)※3階級王者 

②井岡(WBA)※3階級王者

③木村(WBO)

④亀田(WBC)※3階級王者

⑤比嘉(WBC)

⑥内藤(WBC)

⑦亀田(WBA)※2階級王者

⑧坂田(WBA)

⑨八重樫(WBC)※3階級王者

⑩江藤(WBA暫定)

⑪五十嵐(WBC)

 

ここでフライ級でIBFを獲った人って、まだいないのだと気が付く。

木村の3位には異論が多いかもしれないが、田中と互角という時点で地味に凄い。このボクサーがゾウ・シミンを倒すまで全くの無名だったのだから、冷や汗が出る。

亀田興は何気に試合の出来・不出来の幅が大きいので判断(評価)に迷う。技巧派である以上に戦略型だし。作戦が嵌まり絶好調ならば田中、井岡にも勝てそうだが、反面、不出来の時だと木村と比嘉にはアッサリと倒されそう。ただし、穴王者だったとはいえどバンタム級で戦えていたので、その技術と戦力はフライ級だと一線級以上の実力はあるのは確かだ。キレている時の足とパンチは本当にキレ抜群である。

ツートップ的な田中と井岡は時機が合えばSフライで相見えるかも。だが2人とも骨格的にバンタムでは厳しいか。井上尚弥と同時代でなければ、天才の名を冠せられたであろう両者の試合を観てみたい。

比嘉はロサレス戦で一気に評価を下げたというか、あの引き出しの無さだと上位4人に攻略されそうだと感じた。相性的に木村には勝つかも。というか、どうして明らかに過去最強の相手(ロサレス)を短いスパンの選択試合で指名したのか、謎に満ちている。良くても五分五分(負けるという意見もあった)ではないかとファンが予想していたのに、まるで格下扱いだったし。転級しての再起だが、最悪このまま引退かも。

内藤はポンサクレックを攻略したのは凄いが、他の世界戦が。終わってみれば対ポンサクに特化したボクサーと評されても仕方のない防衛ロードだった。まあ、亀田絡みで有名になれたのだから、本人的には亀田様々だろう。陥落した興毅戦は普通に負けると思った。左右の変則フッカーと左のストレートカウンターの使い手だから。1番相性が悪い相手だった。

ぶっちゃけ、7位以下は穴王者だ。五十嵐の最下位だけは異論がないと思う。

 

寄り道をしてしまった。

 

今の時代はトレーニング論や技術論のみならず、キッズボクシングも普及しており、土台からしてまるで違うといった感じだ。アマチュア経験なしからの叩き上げが、世界戦まで到達できるケースは稀になっている。

 

90年代より以前の日本人世界王者の平均と比べると、防御技術が底上げされて、カウンターパンチャーも増えた。特にレフティー。

 

昔は日本人世界王者というだけで、世間には価値(ブランド)があった。

今よりも世界タイトルの価値が高かったのではなく(価値自体はほぼ一緒だと思う)、そこまで到達できる日本人ボクサーが稀少だった故である。

無名の世界ランカーとの防衛戦でも、ボコボコの殴り合いでどうにか防衛。指名試合をクリアするのが大変。大半はその辺りのレベルで一杯一杯だったから。

だから1回でも多く防衛を――

そして、指名試合以外では可能な限り与しやすい相手を。

当時はそれでも世間から賞賛されて、ファイトマネーも入ってきたのだ。

 

だが、今の日本人世界王者は環境と事情が大きく異なる。

未だにSバンタム以上の壁は高いが、海外でWBO世界Sフェザー級を獲得(王座決定戦だから奪取ではない)した伊藤雅雪みたいな例も出始めているくらいだ。

以前よりもレベルが上がっている。

 

その分、ファンと世間の目も肥えた。

 

グローバル化&情報化社会ゆえに島国のローカルチャンプは、島国のローカルチャンプに過ぎない実態を日本の大衆は知ってしまったのだ。

その反面、以前とは異なり海外の一流ボクサーを知る日本人が飛躍的に増える。

日本人世界王者にも、無名相手の防衛戦など観る価値なしと断じ、世界的に強くて名のある相手との試合を『世界戦』として要求する傾向になった。

 

そんな時代にあって、島国のローカルチャンプという枠組を超えて、『本当の世界一線級』で戦えそうな井上尚弥(獲得タイトルは略、彼が期待されているのはソレではない)という『世界基準での』世界王者が出現したりもした。

『ザ・モンスター』の異名に恥じない実力を示す井上は、ロマチェンコ、GGG、テレンス・クロフォード、マイキー・ガルシアといった超一線級と比肩される評価を得ている。※)GGGに勝ったカネロ(サウル・アルバレス)の評価も上がるだろう。

まあ、このレベルの日本人ボクサーが今後台頭するのかは不透明であるが。

テニスの錦織、メジャーの大谷と同様に、それっきりの突然変異種的な気もする。

 

で、本物が周知された反面。

島国のローカルチャンプはローカルチャンプとしての価値しか、世間から認められなくなってしまった。例外は地元(中部)のタニマチに恵まれている田中恒成(ミニマムからフライまでWBO3階級王者)くらいか。ただし、田中は類い希なるその才能も含めて例外中の例外だろう。軽量級だし、地元での試合で興行が成り立ち(強敵も呼べる)、ファイトマネーも恵まれているのならば、無理に海外進出する必要もないからだ。

 

逆に可哀相だったのが、『KOダイナマイト』こと内山高志(元WBA世界Sフェザー級スーパー王者)か。

Sフェザーという人気階級もあり、大田区総合体育館のローカルファイトではなく、本場ラスベガスのリングでビッグマッチをしたかっただろうに。勝敗に関係なく後世に名前が残るし、ファイトマネーだって。同階級で対立王者だった『ボンバーレフト』こと三浦隆司が、WBC王座陥落後にベガスでファイトでき、本場で賞賛を浴びたのとは対照的であった。

全盛期は間違いなくベガスでも通用する一流の世界王者なのに世界の舞台で戦えない――そんな悲劇と悲運の代名詞が、内山であろう。

 

防衛回数よりも複数階級や統一王座、なにより――雑魚相手に世界王座を10回防衛するよりも、ネームバリューがある相手1人に勝つ方が価値がある、そんな時代に。

今の日本人世界王者は以前よりも貪欲に『名前が売れる相手』や王座統一戦および複数階級制覇を求める。キャリアアップを目指しての王座返上もそれに従って増えた。

 

ずっと前から海外の一流どころにとっては、世界タイトルはビッグマッチ戦線に参加する為の通行許可証だった。無名相手にチマチマ防衛するよりもビッグマッチで好勝負して勝ったり負けたりの方が、遙かに金になるからだ。ビッグマッチならば好勝負を演じれば仮に負けても評価は落ちず、逆に商品価値は上がったりもするのだ。

 

日本でも『ようやく』その流れになりつつある。

 

あのGGGことゴロフキンだって、不人気時代は稼げなかった。小さいホールでひっそりと、石田や淵上といった日本人相手にWBAタイトルの防衛戦をしていたのだ。

共に3回KO負けで散っている。村田はGGGと戦えるのかなぁ?

 

誰に勝ったかが問われる時代。

 

その流れに逆らって手頃な弱い相手に防衛テープを伸ばしても、世間の評価や高額なファイトマネーは得られなくなった。元ライトフライ級WBA&IBF統一王者の田口だって、90年代だったらもっと有名で、もっと稼げていた筈だ。

 

そしてマスコミもネット媒体を中心に、そういった方向性での記事になってきている。

時代によって評価される基準は変わり。

報道するマスコミも変革を迫られる時代の到来だ。

アメリカボクシング放送の主役ともいえるHBOが、ボクシング中継から撤退する反面、フェイスブックによるネット配信も増えてきている。

 

むろん、実力だけでは大衆人気は獲得できない。

単に本物というだけではダメなのだ。

プロスポーツは興行でもあるのだから。面白さが最重要ともいえる。

マスコミだって実力だけの選手は大衆に売り込みにくいだろう。けれども亀田路線の拒否感からか、セルフプロモーションが大人しい優等生ボクサーも少なくない印象だ。

 

優等生キャラだと、批判はなくともインパクトは薄い。

それだとスポンサーも付きにくいだろう。

ここで最初の【なんちゃってYAWARA】に話を戻す。

 

思うに今の時代、柔道選手がマスコミを通じて「自分を柔ちゃんと呼べ!」とかアピールしたら、批難も含めて反応は凄まじいだろう。

谷氏のYAWARAちゃん化計画が上手くいったのは、当時の時流もあったに違いない。今だと無残に失敗するかもしれない。

しかし、アンチなき無名よりは、多少ならば世間の反感を買ってでもセルフプロデュースくらいはするべきである。

 

 

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