【4回TKO】ホープ中谷潤人、元王者で1位のアコスタをワンサイドで撃退【WBOフライ級V1成功】
さあ、戯れ言《
【引用元――Photo by ゲッティ=共同】
“愛の拳士”がアメリカでV1成功
無傷の21連勝で世界王座に到達。しかし中谷にとっては夢の実現ではなく、夢へ向けた真のスタートに過ぎなかった。新型コロナ禍の影響で試合間隔が開いて、実に約9ヵ月ぶりの実戦だ。ボクシングで家族を幸せにする為には、試合をするしかない。それもできるだけ大きな舞台で。ファイトマネーを稼ぐ。現状の知名度ではスポンサー料はビッグマネーとはいかない筈なので、とにかく世界戦で勝ち続けなければならないのだ。
そんな状況下の中、若き世界王者、いや世界のホープは難敵相手の初防衛戦を文句なしのTKO(レフェリーストップ)にてクリアしてみせた。
9月10日(日本時間11日)
会場:アメリカ・アリゾナ州トゥーソン
カジノ・デル・ソル・トゥーソン
WBO世界フライ級タイトルマッチ
TKO4回32秒
勝利 王者
中谷潤人(23=M.T)
戦績:22勝(17KO)無敗
VS
敗北 同級1位
アンヘル・アコスタ(30=プエルトリコ)
戦績:22勝(21KO)3敗
※)中谷はV1に成功
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中谷潤人について
“愛の拳士”については当記事が2つ目だ。
まだ23歳。大きな怪我や病気がなければ、これから10年は世界トップ戦線で戦える逸材である。階級も上げていくだろう。彼の勝利の記録をできるだけ書き続けていきたい。いや、負けたら敗戦の記事になるのだけれど。
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試合を振り返る
相手のアコスタは強敵
元WBO世界Lフライ級王者で3度の防衛に成功(V4には失敗)、この試合で2階級制覇を狙うアコスタは22勝のうち21KOと高いKO率を誇る。世界戦は4勝4KO2敗で、プロ初敗北が世界初挑戦失敗に終わった田中恒成戦(当時16戦全KO勝ち)だ。
V4に失敗した試合は12回22秒KO負けだが、内容自体はそんなに悪くなかった。
最悪で中谷の王座陥落もあり得る危険な相手。
しかし試合前のオッズは王者が1.1倍で挑戦者が5倍だから、中谷の勝利が鉄板と予想されていた。期待されているのはKO防衛。内容を伴った圧勝である。そして「この試合を足掛かりにフライ級で世界へ名前を売る」こと――
初回に勝負を決した左ストレート炸裂
フレームで上回る中谷が、試合開始早々から快調にステップを刻み、パンチを伸ばす。
減量も上手くいき好調さが伺える。
で、リーチの長さを活かしたロングレンジからの左ストレートが、アコスタの顔面のド真ん中をキレイに捉えた。ジャストミートだ。
The MASSIVE left hand from Junto Nakatani that got the blood flowing out of Acosta’s nose. 😬😬#ValdezConceicao | Undercard on ESPN+ pic.twitter.com/B5zEIz2Q0n
— Top Rank Boxing (@trboxing) September 11, 2021
大きくロープ際まで後退するアコスタ。
この一撃で鼻の骨が折れていた。
2ラウンド目、3ラウンド目とロングレンジのみならず接近しての応酬も、中谷は長い腕を起用に畳んで、コンパクトなブローを繰り出しアコスタを上回る。ちょっと危なかったのは2ラウンドの終了間際くらいか。本人は一発も効いていないとの談。
鼻からの出血が激しいアコスタに、2ラウンドと3ラウンドそれぞれドクターチェックが入るが負傷TKOには至らず。とはいっても、中谷は自力でダウンを奪うべくアコスタを蹂躙し続けた。
4ラウンド開始して間もなくだ。
まだ両者は対峙していたのだが、余計な決定打が入る前にレフェリーはあっさりと試合を止めてアコスタを救う。
中谷の完勝だった。
これで5連続KO勝ち。
田中恒成より強いかも
Sフライ級で井岡一翔に負けた試合内容と、田中のアコスタ戦および中谷のアコスタ戦を比較すると、現時点では中谷の方が評価は上かもしれない。
田中のアコスタ戦はLフライという点を加味してもだ。
世界戦9勝6KO1敗の田中と、世界戦2勝2KOの中谷ではキャリアが違うが、右ガードの欠点と戦略性の欠落を露呈してしまった田中では、(欠陥を修正できないままでは)中谷に攻略されてしまうのでは、と感じた。
とはいっても、田中はフライ級に戻さないし、中谷は当面はSフライに上げないから、両者が拳を交えるのは、かなり先の話になるだろう。早くて3年後、遅ければ5年以上は先になるかな。
大橋秀行評論
技術、パワー、進化の3拍子がそろった中谷の快勝劇だった。序盤から右ジャブが非常に良く、倒そうという気迫がアコスタを後退させた。特に1回、外側から大きく振った左フックをみせた後、最短距離で左ストレートを打ち込んだ技術は圧巻だった。あの左ストレートでアコスタをぐらつかせた時、鼻骨を破壊したのだろう。鼻血が止まらなかった。挑戦者の接近戦に対しても冷静だった。強振せずにヒット優先に切り替えたところも良かった。挑戦者の鼻血でTKO勝ちとなったが、あのまま試合続行でも、いずれ中谷が倒していたと見る。
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次戦はWBCとの統一戦を希望
「お客さんは熱くなってくれたのが分かりました。今後は統一戦がしたいです。一番はWBC王者のマルティネス選手(メキシコ)」中谷潤人
フリオ・セサール・マルティネス
26歳(メキシコ)
18戦16勝12KO1敗1NC
世界戦3戦2勝1KO1NC
敗戦はデビュー戦の判定負けのみ
アコスタを撃破する前までは、現在のフライ級で最強の評価を得ていた王者だ。
今では中谷の方が評価は高いだろう。
18戦12KOと22戦17KOだからKO率でも上回っている。
実現すれば、中谷のKO勝ちと予想するが。