【WBC世界Sバンタム級戦】和毅、バルガスへの雪辱に失敗について【亀田ブランド終了か】
さあ、戯れ言《
【引用元――WBC世界Sバンタム級王座統一戦でレイ・バルガス(右)のパンチを浴びる亀田和毅(共同)】
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和毅、正規王座を吸収ならず
7月13日(日本時間14日)
会場:米カルフォルニア、ディグニティ・ヘルスSP
WBC世界Sバンタム級王座統一戦
判定3-0(117-110✕3)
勝利 王者
レイ・バルガス(28=メキシコ)
戦績:34勝(22KO)無敗
VS
敗北 暫定王者
亀田和毅(27=協栄)
戦績:36勝(20KO)3敗
※)バルガスはV5に成功
はっきりと凡戦だった。アマ時代の因縁云々以前の問題だ。
負けた和毅はもちろんの事、勝利したバルガスも商品価値を下げるという試合内容。両者共に試合中にブーイングを浴びた。それでも和毅は最後には観客からの拍手を得られたが、バルガスは試合後にコーナー上で勝利をアピールした際、加えて勝利者インタビュー時でも、同胞からの痛烈なブーイングに晒される。
メキシコでの人気、という一点に限り和毅は首の皮が繋がったかもしれない。だが、ここからSバンタムでのトップ戦線に舞い戻る事や、ビッグマッチどころか次の世界戦のチャンスすら、かなり難しくなったと言わざるを得ないだろう。
バルガスに至っては、この様では今後、アメリカを主戦場としても人気を得て大金を稼ぐのは「勝ったにも関わらず」困難になってしまった。
とにかく観ていて「つまらない」試合。
それは和毅の無策さとバルガスの消極性がコラボした結果である。
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試合を振り返る
序盤のみは和毅も好調だった。
ガード、ムーブ、ジャブを織り交ぜてバルガスの懐に飛び込む。
そこから右オーバーハンド、右ストレート、左フック。特にバルガスのフックを誘ってからカウンター気味に繰り出された左フックは、タイミングが良かった。キレている。右も伸びる。ハンドスピードは明白に和毅が上。
身長とリーチで大幅に劣る以上、バルガスに接近戦を挑むのは間違っていない。
打ち終わりを狙わせない為に、攻撃後にクリンチで流れを寸断するのも。
スピードとテクニックは互角以上だった。この2つが劣っていた場合、相手の懐に潜り込む事すらできずに、ロングレンジに釘付けにされるのだから。
パンチ力に欠けている為にダメージは与えられなかったが、序盤の4Rは和毅にとって想定内の展開だったと思う。けれど懐に入ってからの手数が乏しく、どうしても単発な印象が強い。それも後半になりバルガスの動きを読めてくれば、コンビネーションや連打へと繋げられるだろう。滑り出しは上々、そんな立ち上がりだった。
問題は5R以降である。
序盤の展開は良かった――が、中盤以降の作戦(ファイトプラン)が無いのだ。
展開に変化を付けられない。
あるいは、違ったパンチのパターンを用意して温存していない。
なんと中盤に入っても序盤の繰り返しなのだ。
至極当然だが、和毅がバルガスの動きを先読みするより先に、バルガスが和毅のパターンを学習してしまった。こうなると和毅は苦しい。
バルガスはリーチを生かして「見栄えの良い」パンチを数多く出す。
クリーンヒット自体は両者に差はないのだが、単発で終わってしまう和毅に対して、バルガスは手数が豊富。これではポイントはバルガスに流れていく。
終盤になっても状況は変わらず。
バルガス対策を練っていたという話だが、対策らしい対策は見られない。
まさか「飛び込んでの接近戦」&「右オーバーハンド」のみがソレなのか。
パンチを読まれている和毅は、やっぱり攻撃後にクリンチだ。懐に入られたバルガスも、安全策をとってクリンチだ。2人揃って積極的にクリンチにいくという超絶なクソ試合が爆誕する。スリップダウンも多発した。
倒す気配が皆無のバルガスの手打ち連打&腰が引けての後退、あげくクリンチ。
頑張って追いかけるも、パンチを読まれているので、手数を出せずにクリンチ。
ザ・相撲ファイト。ゲーム終盤にはブーイングが。
膠着状態のまま、虚しく試合終了のゴングが鳴り、判定決着へ――
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進歩していなかった和毅
以前から指摘していたが、亀田和毅最大の弱点は、ズバリ頭脳だ。
いわゆるボクシングIQ。
今回の敗戦にしても、マクドネル戦での経験が全く活きていない。これでは和毅よりも長身でリーチのある相手には、何度やっても同じ展開でポイント負けするだろう。
陣営の作戦やセコンドにも問題ありだ。
まず大前提として判定決着を想定・計算した組み立てを考える。
ならば最低でも序盤、中盤、終盤と「軸になるパンチ」を変えて、攻撃パターンをバルガスに読ませない事が必須となる筈だ。可能ならば、序盤と中盤で終盤への罠(布石)を張り巡らせ、終盤に「虚を突いた」とっておきのパンチを放つ――のが理想か。
それなのに序盤で引き出しを使い切っている。その引き出しも乏しいし。
接近(追いかけ)⇒単発パンチ⇒クリンチ。
この繰り返しも酷かった。マジでこれしかないの?
せめて、接近⇒単発パンチ⇒バックステップ。
または「相手を呼び込む工夫」も織り交ぜる。
更に相手からのクリンチを振り解けないときた。
そもそも今回の様な敗戦パターンは容易に想像できる筈なので、接近戦が上手くいかなかった場合の打開策を考えていなかったのか。いなかったのだろう。何しろセコンドが「前に出ろ」&精神論しか叫んでいなかったのだから。
ボクサーとしての性能は、明らかに長男の興毅、次男の大毅よりも上だ。
しかし自身の長所と弱点を熟知して分相応の試合運びができた興毅や、割と冷静にセコンドの指示に対応できていた大毅と比べると、和毅はなまじスピードとテクニックに優れている分だけ、思考よりも感覚重視で場当たり的に戦っている印象だ。
試合後のコメントも惨敗にも関わらず「できる事はやった」「勝っていたと思う」という旨の発言を残している。和毅のスペックを考えれば、できる事はまだまだあった筈だ。バルガスを指導するトレーナー、ナチョ・ベリスタインは「トモキは素晴らしいスキルやスピードを持っている。それを押し通せばいいのにラフに対応してしまった」と云っていた。ぶっちゃけ、ベリスタインが和毅のトレーナーでセコンドだったら、全く違った試合(展開)になっていたのでは?
「勝っていたと思う」発言については、ポジショントークかもしれない。当事者としての感覚(主観)的には、和毅は逃げる(下がる)バルガスを追い詰めて、攻撃的にパンチを狙っていたのだから、そう錯覚するのも無理はない。けれど冷静にゲームを俯瞰して思考できれば、ポイントを取られている流れだと理解できる筈だし、しなければダメである。
ハッキリと断言すると今のままでは頭打ちだ。
この試合に備えてフィジカルトレーニングをより強化した。
その時点で間違っていたといえる。
和毅が鍛えなければならないのはボクシング脳であり、引き出しを増やす事であり、可能ならばトレーナーやチームを刷新するべきだろう。
亀田ブランドの終焉
一旦、ここで亀田家物語が幕引きとなるのは避けられないと思う。
世界戦で5勝(1KO)3敗――
このバルガス戦、和毅の未来にとっては「絶対に」落としてはならない試合だった。マクドネル戦(の連敗)を払拭して、真に世界のトップ戦線に躍り出る為にも。暫定王座はその通行手形に過ぎなかったのだから。
敗北という結果が同じであっても、試合内容が良ければ次に繋がった。
残酷だが、次に繋がる試合内容ではなかった。
高級咬ませ犬として驚愕のアップセットでも演出しない限り、ここから次のチャンスを待つ時間は、前回を超える相当の忍耐を要するのは必至だし、また和毅自身が大きくスケール(バージョン)アップしないと同じ敗戦(失敗)の繰り返しだ。
村田は見事に復権したが、それは前回の敗戦を糧に、課題を克服して作戦を変更できた事が大きい。同じ失敗を繰り返してしまった和毅が、村田の様に復権するのは、現時点では極めて厳しいと思う。